知多乗合に登場したFCHV−BUS
その2.営業初運行に乗れ!(2006.3.9-3.10)

今回の「暫定体制」では水素ステーションがまだ工事中ということもあり、
中部国際空港への乗り入れは見合わせて知多半田駅〜常滑駅間にとどめ、
半田市内にオフサイト式の水素供給設備を仮設して朝の1往復で始めることになりました。

式典の1週間後、再びムーンライトながらの客となり、知多半島をめざした。
(2006.3.9)

名古屋から東海道線の上り列車で大府へ向かい、武豊(たけとよ)線に乗る。 めざすは始発地となる名鉄河和(こうわ)線の知多半田駅だが、JR半田駅とは500メートルしか離れていないので、 青春18きっぷを使う場合はJR半田駅から歩いて知多半田駅に行く方が経済的で、 東京方面からでは金山または熱田〜神宮前乗り継ぎに比べ20kmも短くなる。
(豊橋〜大府〜JR半田67.5kmに対し豊橋〜神宮前〜知多半田89.3km)
なお関西方面から来る場合や愛知県内に長期間滞在する場合は名鉄・近鉄・南海と3社の系列バス会社 (当然知多乗合を含む)で使える「ワイド3・3・SUNフリーきっぷ」(6000円、3日間有効)があれば それを使うのが得策で、これを買って刈谷から碧南経由で来ればよかったと後悔・・・
※しかしその後3・3・SUNフリーきっぷは平成18年中に廃止

知多半田駅バスターミナルに入ると再開発工事真っ盛りで、仮設のロータリーにプレハブの待合所が設置されていた。
知多乗合の路線バスに混じって日本車輌衣浦(きぬうら)工場や中部電力碧南火力発電所、 日本福祉大学への送迎バスが出入りするが、そこになぜかアルファードとハイエースが入ってきた。 1台はレンタカーだったのでトヨタか知多乗合の関係者かと思ったが、 今日の運行初日の模様を収めるべくやってきた報道陣のようで、腕章やカメラに貼ってあるステッカーからすると CBC(中部日本放送)と テレビ東京(実際はテレビ愛知?)の2社だった。 2日の式典と試乗会では新聞社やテレビ局が大勢来ていたが、今回の営業運行初日も収めるとはなかなか熱心だな・・・と思った。
しかしこの2社が番狂わせの元凶となるとは・・・





8時00分の快速中部国際空港行きに続いて8時03分発の常滑経由中部国際空港行きが出発するが、 そのスジ(ダイヤ)はFCHV−BUSの入る時刻ではないか? まあ通勤・通学時間帯で沿線に通勤・通学する人が多数いるから、このスジはFCHV−BUSと一般車の2台で走り、 FCHV−BUSを常滑止まりの増発便に回すのかなと睨んでいたが、真相はわからなかった。
待っていた学生たちは前の空港行きに乗車、FCHV−BUSで運行される常滑止まりには僅かにいたバスファンと地元民、 関係者ら10人程度が乗った。

万博時代はビデオ鑑賞に集中させる目的もあった窓フィルムだが、市街地を走るときは地元民から見れば 窓の外が見えなくなるので不都合としかいえない。緑の着色ガラスだったら変色しても沿線風景を楽しめる・・・というより 風景を通して地域事情を垣間見ることもできるのだが。

成岩(ならわ)橋の踏切で先ほど知多半田駅に止まっていたテレビ愛知のハイエースが横につき、 踏切を渡ると追い越して走行シーンを撮影した。すると今度はCBCのアルファードも追い越し車線につき、 走行シーンを撮影して先行する。ひょっとしたらこの初運行が夜のニュースで流れていたかもしれない。
更に半田医師会健康管理センターからレポーターとカメラマンが添乗してきたが、これが番狂わせの元凶となったのは、 実は初運行の音を録音していて中断せざるを得なくなったためで、インタビューを受けたときに自分にマイクを向けられて 自分の声が入ってしまう=騒音源になってしまうことは避けたかったという思惑がある。
乗客へのインタビューや細部の撮影を行っていったが、 カメラマンの「燃料電池バスらしい部分を撮りたい」という要望にはどう助言すべきか正直困った。
とりあえず見た目は普通の路線バスと同じ造りになっているので、終点の常滑駅か運用のあとで営業所まで来てもらって 屋根上の水素タンクや後ろのエンジンルームに設置されている燃料電池スタックを見せるのが手っ取り早いが、 いかんせん走行中なので見せることができない。
後ろの窓がない点、シフトレバーが前進・中立・後退の3ポジションになった点は乗客でもわかるが、 運転席の燃料計が水素タンクの圧力計に変わった(デジタル圧力計が増設されている)点は運転士や自動車に詳しい人、 バスファンでなければわかりにくいだろう。
DVDプレイヤー一式も新しいビデオを製作中なのか未使用のまま。 万博時代そのままの客室と相まって都バス時代を考えると物足りなさを感じる。

いつの間にか常滑の市街地へと入ってしまい、周辺の地理事情を感じ取る余裕がないまま常滑駅に着いてしまった。 先程のテレビ局2社に加えて常滑には中日新聞の記者も来ていたようで、僕もインタビューを受けた。




常滑駅での折り返し待機中は競艇場行きバス乗り場に移動して非公式の車両展示会となり、これを機に細部のチェックにかかる。

まず気になる前歴:万博当時の番号が気になるので手がかりを探す。
FCHV−BUSはまだ型式認定を受けていないが、万博バージョン故か日野自動車・JBUS(旧日野車体)両社の 製造銘板は見あたらなかったのが残念だったが、運転席を覗くと計器板に「7号車」のシールがまだ残っていたのは幸いだった。
更に外付けのタコグラフに「375」の表記があったが、何のシリアルナンバーだろうか。

CNG車と同様のデジタル圧力計

DVDプレイヤーもそのまま
この日は初乗りのあとに中部国際空港で久々にヒコーキを撮影する予定を組んでいたため復路第1便を常滑で見送ったが、 思いどおりに撮れていなかったので、その日の上りながらの指定を取り消して名古屋に泊まることにした。

見送りのカットがこれでいいわけがない

今のところセントレアでしか見られない金色のボーイング737



やっと聞こえた乗客の生の声(2006.3.10)

翌日改めて武豊線で半田へ向かい、実際の乗客の流れや生の声、沿線風景を探ってみた。
名駅から名鉄常滑線の河和線直通に乗れば早いが、帰りはJR利用なので青春18きっぷを使い 東海道線〜武豊線でまた半田へ。しかし雨が降っていたとは予想外だったが・・・
(名駅〜半田:名鉄河和線急行33分、650円、JR武豊線区間快速41分、650円)
再び知多半田駅バスターミナルに入ると、仮設の待合室の外には学生がいるわいるわ。学生達は昨日は空港行きに乗っていったが 今日はFCHV−BUSを心待ちにしていたようで、バス待ちの間もFCHV−BUSのことで盛り上がっていた。

8時00分発の岩滑(やなべ)経由・快速中部国際空港行きが出た後、FCHV−BUSが「知多バス」表示でやってきて、 ターミナルの手前で「常滑駅」行きに表示を変えて登場。
今回も都バスS−L111号車同様に「誰か」が添乗していたが、首から提げているネームタグを見たらトヨタの技術者だった。

学生達に混じり中ドアから整理券を取って乗る。座席は学生達で満席になり、立錐の余地もなかったので前輪付近に立つことにした。
再開発真っ只中の半田市街を走り末広町に停車。ここでも学生が大挙して待っていて、先に出た空港行きが停まっていたが、 空港行きとこの常滑行きとで経由地が異なるのか、それともFCHV−BUSは単なる続行便なのか、学生が乗ってきたのはこの車の方だった。

学生達も乗りたかったようで・・・
JR半田駅の手前で知多半島の先端:美浜方面へ右折、古い街並みの中を走る。 通勤時間帯なのに途中の停留所で待っている乗客が全然いないのに驚いたが、途中からの乗客は前の空港行きに乗っているのだろうか。
しかし雨と多客で窓が曇っている。こういうときに都バスS−L111号車や知多乗合の従来車なら乗客の意思で窓を開けて 外気を取り入れることができるだろうが、この車は他の都バスL代車(平成15年度購入)同様窓が開かないうえに 屋根の構造上換気扇もないので、運転士が車内の状況を見てこまめに空調を動かす必要がある。 都バスでは固定窓は失敗と感じたのか、翌年度のM代車(平成16年度購入)以降は上半分が開く構造に戻しているし、 JR京浜東北線の209系電車も当初は固定窓だったが、平成17年に停電で止まってしまったときに空調が止まって 換気ができなくなり、体調不良を訴えた乗客が多かった反省から窓が開くように改造されている。

成岩橋で右折して県道34号線を常滑へ。しかし右折してすぐのところに名鉄河和線の踏切があり一旦停止で流れが止まるが、 この踏切は国道247号線とも共用しているので、信号待ちも重なるとたちどころに渋滞する。 このため成岩橋を含め名鉄河和線の青山駅(旧南成岩駅)周辺を高架化する計画があるが、 国道が踏切でクランクしているうえに県道34号線の横を神戸川が流れているので、 工事も竣工後の信号制御も一筋縄ではいかないだろう。 なお国道247号線は知多半島の沿岸をなぞるように通っていて、FCHV−BUSの走る県道34号線は 国道247号線をショートカットしているので、常滑市内(奥条7丁目)でも交差する。
西成岩で3人が乗車。西成岩から南知多道路半田ICまでは衣浦港へのアクセス道路となっているため片側2車線となり、 バス停部分には切り欠きもあるので走りやすい。 板山からは片側1車線になったが、遅ればせながらも2車線化工事が行われている区間や 用地買収が済んでいる区間があるので、数年後には国道247号線をショートカットする路線としての機能が強まることだろう。

車内では学生達が異口同音にFCHV−BUSに乗れたことを喜んでおり、中には「水族館のような車」という声もあった。 それだけ関心が高いことを表しているようで嬉しい限り。 西板山でその学生達が大挙して降りていったが、後日調べると西板山に半田養護学校があり、 知多半田駅と末広町から乗ってきた学生の多くはここの生徒で、新技術を盛り込んだ最新鋭のバスで登校できたことで 多くの生徒が満足げだったのが印象に残った。 新年度になって2台目が入ったら下校時にも乗れる運用を組んでほしいのは僕や養護学校の生徒だけではなく、 親や教師も思っているはずだ。

養護学校の生徒が降りたことで寂しくなったが、学生達の嬌声に代わって高い静寂性故に後ろに座っている高校生の ヘッドホンから漏れる音が耳障りだ。
FCHV−BUSの強みのひとつである静寂性をことごとく破るとはまかりならない以前に、 バス車内でポータブルオーディオやゲーム機を大音量で使うこと自体他の乗客にとって迷惑千万だ。
「静かな車=走行音が耳障りにならない=音量を下げても十分聞こえる」という認識を持って乗って欲しい。

西板山の先で常滑市に入ったようだが、トラックが止まっていたため標識が見えなかったので気づかなかった。 また知多半島の水源:愛知用水も東長峰の先で渡っていたが、暗渠になっていて確認できなかった。 その常滑高校の生徒が常滑東口で下車。これでやっと静かになり、「本来の静寂性」を堪能できる。



山方橋からは常滑の街中を走る。古くからの木造住宅が建ち並んでいるが、このあたりは常滑焼の窯元が点在しているが、 窯元は裏通りに集中しているようで、雨が降っていなかったら取材の後で散策に行きたいと思った。 なお休日には常滑駅から観光循環バスも走る。
競艇場口で左折すると道幅が広がり、郵便局の前には中部国際空港へと続く常滑線の高架が見える。 すぐに右折して高架をくぐると終点の常滑駅。先行する空港行きに乗客を奪われたのか降車客は僅かだった。

昨日はロータリーでちょっとした展示会状態だったが、この日は雨ということもあって市民病院の近くにある操車所に引き上げ、 9時15分発の知多半田行きで折り返す。

しかし3月22日で一旦運行は打ち切られ、バスは一度トヨタに返却された。 運行再開は中部国際空港島内に建設中の水素ステーションの完成を待つことになる。




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