知多乗合に登場したFCHV−BUS
その1.実証走行試験運行開始イベント(2006.3.2)


愛・地球博の閉幕から半年、長久手会場と瀬戸会場を結んでいたFCHV−BUSに 再び活躍の舞台が与えられることになった。
万博閉幕後は東京モーターショーやエコプロダクツ水素燃料電池展(FC EXPO)の試乗車として JHFCプロジェクトで1台が細々と動いていたが、本音としては平成16年末に志半ばで勇退させられた 都バスS−L111号車の「遺志」を継ぎ、営業用ナンバーをひっさげて路線バスとして第一線に復帰することを望んでいた。
万博バージョンはせっかく8台(実際は9台)も造られたのだから、少なくとも2〜3台はどこかのバス会社に貸与して 営業運行を続けてもらわないことにはもったいないし、30億円近い巨費の元は取れないだろう。
個人的にはS−L111号車の後継として都バスを、万博バージョンの遺産を継承すべく名古屋市バス、名鉄グループなど 愛知県内外の公営・民営バス数社を候補に考えていたが、万博閉幕後の新天地を与える動きは水面下であったようで、 同じ愛知県の知多半島にある中部国際空港周辺:常滑市臨空地区に万博パビリオンで稼動させていた 新エネルギー施設を移設して実験運転を続けることになっていて、 その一環として瀬戸会場の水素ステーションを臨空地区に移設してFCHV−BUSを営業運転に供する旨が12月に報じられ、 新たな活躍に期待がかかった。
そして2月になると上旬に国土交通省から、月末にはトヨタ自動車・日野自動車共同のリリースが出され、 貸与先も地元の知多乗合に内定したことで 愛知県下でのFCHV−BUS運行開始への気運が高まっていった。

(国土交通省)
http://www.mlit.go.jp/kisha/kisha06/09/090207_.html
(トヨタ自動車)
http://www.toyota.co.jp/jp/news/06/Feb/nt06_0212.html
(日野自動車)
http://www.hino.co.jp/j/corporate/newsrelease/pressrelease/detail.php?id=91

一足早く式典でご対面(2006.3.2)

国土交通省主催のFCHV−BUS運行開始イベントが中部国際空港で、また同省主催の 「燃料電池自動車の実用化促進に向けた官民の取り組み状況の報告会」が常滑市民文化会館で開催されるため、 青春18きっぷ期間開始間もない3月1日の夜、ムーンライトながらで東京を発った。
イベントも試乗会も午後から行われるので午前中はフリーになり6時間も空いているので、 昨夏の愛・地球博にあわせて乗る予定だったにもかかわらず断念していた、 名古屋近郊を走る「特殊なバス」の試乗に出かけられるではないか。 そこで名古屋到着後に中央線で大曽根へ向かいガイドウェイバスを試乗、その後名駅へ戻り名鉄バスの三菱エアロスターHEVを 試乗しようと名駅(名古屋駅)の名鉄バスセンターへ。

しかし予想外の事態が発生した。当初エアロスターHEVは津島営業所に配置されて名駅を結ぶ路線に入っていたはずだったが、 万博閉幕後に津島を離れて一宮に転属しているとのことで急遽尾張一宮へ急行したものの、 肝心のHEVは遅番のダイヤに入っているため11時台まで更に待たされることに・・・

「実車版ミニ四駆?」名古屋ガイドウェイバス(大曽根)

名鉄バスに2台導入されている三菱ふそうエアロスターHEV
(一宮バスターミナル)

この結果HEVには起(おこし)循環線で乗れたものの、2時間の出庫待ちが大きなロスとなり、 せっかく中部国際空港へ行くのだからと全日空&エアーニッポンが中部〜台湾線で飛ばしている 「金色のボーイング737−700」(JA01AN&02AN)撮影を組み込んでいたにもかかわらず 10時の離陸には間に合わなかったためアウトになってしまった。

一宮から急行で名駅へ戻り、更に名駅から空港特急ミュースカイに乗り継いで中部国際空港へ急ぐ。
運行開始記念イベントはどこで行われているのかとターミナルビルを右往左往した結果、 バス乗り場で開催されていたが、中部国際空港のバス乗り場は空港駅の高架下なので、 ターミナルビルに空港リムジンバス乗り場があり空港駅が別棟になっている関西空港や、 空港駅が地下にある成田空港や羽田空港に慣れている身には煩わしい。 もっとも中部国際空港に降り立った人にはこの方がまだわかりやすいかもしれないが・・・

1階のバスターミナルに降りてみると9番乗り場で既にイベントは始まっていた。 基本的には来賓のみの参加だが、報道陣やギャラリーが式典会場の外やタクシー待機場にもいて注目度の高さが窺える。
しかし都バスS−L111号車のときは除幕式やレプリカキー授与式も行われたのに今回はテープカットのみ。 これではイベントというには大袈裟でむしろ式典といった方がいいような気がする。 空港は海の上なので除幕式を組み込もうにも幕が強風で吹き飛ばされてしまうためできないのか、 それとも派手なパフォーマンスをあまり好まない土地柄なのだろうか。

式典中はFCHV−BUSに近づけない・・・

ならば反対側から見てみよう!

登録番号は名古屋230あ・601。FCHV−BUSでは2番目の営業用ナンバーとなる。
外観は引き続き白と緑を基調としているが、万博バージョンと異なる新しいラッピングフィルムで装飾され、白の面積が増えた。 今回は水素分子と酸素分子を擬人化したものになっている。 窓は固定窓のまま引き続きラッピングフィルムで覆われることになった。
前面は日野のHオーバルが知多乗合のCに置き換わったが、これが唯一の知多乗合車をアピールする部分で、 「これがあれば知多乗合の車だ」と思わせるマストアイテムがないのが残念だ。
前のバンパーが白くなったことも起因しているが、まず社番がどこにも書かれていないのが変だ。 通常の知多乗合車なら少なくとも前輪脇に4桁の数字か英字+数字の組み合わせで社番が表記されるのに、 それがないのが違和感を感じさせる。運行開始までに番号を決めて整備されるのだろうか。 また側面には路線車であれ貸切車であれ、何らかのかたちで知多乗合車のシンボルであるかもめが描かれているはずなのに それさえもなかった。
万博時代には前ドアの鴨居部分に2桁の番号が記載されていたが、それもラッピングフィルムを張り替えて消えたので 前歴はわからなくなった。但し車内に入れば何らかの手がかりをつかめる可能性がある。

書体は同じだけどFCHV−BUSの名前は捨てたの?

知多乗合車の象徴ともいうべきかもめ
FCHV−BUSにはなんでないの?
違和感を感じさせたものはまだあった。 これまで日野&トヨタの燃料電池バスには長らく”FCHV−BUS”という呼称があり、 大なり小なり車体に記載されていたが、今回はその呼称を捨ててしまったのか、フォントはそのままに ”FUEL CELL BUS”となってしまった。

知多乗合では新勢力のセレガRが登場
式典が終わると2台のFCHV−BUS万博バージョンが現れ、今回の主役:知多乗合バージョン共々3台に 来賓と報道陣を乗せて報告会と試乗会の会場:常滑市民文化会館へと出発していった。 このときは万博当時でも見られなかったFCHV−BUSの隊列走行が実現している。 セントレアラインの料金所で見ることができたら壮観だったことだろう。 営業用ナンバーを与えられての新たな旅立ちを前に仲間に見送られているようで、時節柄卒業式のようだ。
乗りきれなかった報道陣のために応援で知多乗合の貸切車も現れたが、今回はセレガRが配車されていた。 三菱車が大手を振って走っていた名鉄グループでは、最近になって愛知県に本社や生産拠点を持つトヨタ自動車と その関連企業に配慮して日野車を採用するケースが増えているというが、昨今の三菱自動車グループの不祥事続きとの 関連もないとは言い切れないだろう。
常滑へ戻り、今度は文化会館で開催される試乗会に臨む。
僕の回は比較的遅い時間帯が割り当てられていたため、中庭に展示されている乗用車タイプの燃料電池車を見学、 更に会館の入口で試乗車を撮影するが、左側がなかなか撮れず難儀する。 更にバスラマの和田編集長も見かけたが挨拶し損ねたし・・・その後講演を聞いている間に試乗会の時刻になった。

常滑市民文化会館の中庭では燃料電池自動車の展示会が
開催され、先日試乗したFCXの他に出光保有のFCXも登場


試乗車は知多乗合バージョンと万博2号車の2台が用意され、文化会館を起点に競艇場の外周を交互に周回する。
僕の指定された時刻は16時20分で幸運なことに知多乗合バージョンが割り当てられ、ちょっと得した気分・・・だが、 都バスS−L111号車のようなわくわく感や新鮮味がなぜか得られなかった。

今回試乗できた知多乗合バージョンの車内

一般の知多乗合車の車内(3052)
というのが、ラッピングフィルムを改めた外観とは裏腹に、内装は整理券発行機・運賃箱・運賃表が加わった以外は 青い座席が並ぶ万博時代そのまま。DVDプレイヤーと液晶ディスプレイも残されていた。 降車ボタンに注意書きのステッカーが貼られているが、路線車といえば優先席の設定がないのが変だ。 特に名鉄グループのバスに共通する装備品:ヘッドレストのカバーがないのが違和感を感じさせる。 単に改修費を抑えたいのかFCHV−BUSに乗り気でないのか・・・
都バスS−L111号車では新規に造られたからか、表地をみんくる柄にしたりPRビデオを作成したりと 都市新バス以上の「豪華装備」だったのに・・・

沿道はまだ荒涼としており撮影には申し分なさそうだが、ここで”作戦”を誤った。
試乗会は16時30分で最終だったようで、16時30分発の試乗車(万博バージョン)を見送った後で 常滑線(空港線?)の高架付近で待っていたら知多乗合バージョンは「あさっての方向」へ・・・
講演を聴かずにその時間を撮影に回せば、後日労せずして好きなアングルを収めることができるまで 何度でも撮れただけに残念無念。これが翌週の営業初日に再び知多半島入りする直接の理由になった。

そして帰京後、東京3月8日発のながらを押さえ、再び知多半島をめざす。



FCHV−BUS
トップへ
トップページに戻る