念願の”燃料電池自動車を運転する” 〜日産エクストレイルFCV試乗 (2007.4.8) |
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2007年3月12日のJHFCセミナーで、日産自動車のスタッフから銀座の日産本社ギャラリー(当時)で
エクストレイルFCVの体験試乗会を開催する旨の情報を入手した。 これまで東京モーターショーやFCEXPOなど燃料電池自動車の試乗会には何回か行ってその乗り心地を堪能しているが、 いずれもスタッフの運転で助手席や後部座席への乗車だった。 今回の試乗会では一歩踏み込んで一般の方にも運転してもらい、 性能や使い勝手を調査して燃料電池車の開発に役立てるというもの。 これは一足早く燃料電池自動車の運転を体験する絶好の機会であるが、 実は平成18年の春にも同様の試乗会が実施されていて、不覚にもそれを逃していた。 しかし前回の運転資格はゴールド免許保持者(優良運転者)という制限があったため、 情報を得ていたとしても免許証の条件から断念しなければならなかった点は同じだが、 今回は普通免許取得1年以上に条件が緩和されたため、 体験試乗の門戸が広く開放されたことになる。 |
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これを聞いて3月中旬に日産ギャラリーに電話を入れ試乗を申し込んだが、
初回の3月25日は既に予約が埋まっていたので、2回目の4月8日に行くことにした。 |
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好天に恵まれた4月8日、都知事選挙投票を早々に済ませて昼過ぎに日産本社ギャラリーへ赴く。
日産ギャラリーは銀座に2か所あり、ひとつは銀座4丁目交差点角、もう一つはそこから東へ行った銀座6丁目・
新橋演舞場の隣で、本社ギャラリーは後者である。本社ギャラリーは晴海通りから奥まっているため
少々わかりにくい場所にあるが、間違えて銀座ギャラリーへ行っても両ギャラリー間は日比谷線で1駅だし、
土休日は専用のエルグランドで送迎してくれる。 (本社ショールームは2009年に横浜へ移転したため現在は送迎サービスは終了) |
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受付で今回の試乗を予約してある旨を告げ、申込書に必要事項を記入。出発時刻まで参考までにエクストレイル(T30系)の
カタログを閲覧する。 参考:エクストレイルFCVとベース車の比較
エクストレイルは前輪駆動と四輪駆動の設定があり、燃料電池自動車では前輪駆動車をベースにしている。 後軸にもモーターを増設したり、ホイールインモーターを使ったりして三菱ランサーエボリューションMiEVのように 四輪駆動化することも技術的には可能だが、前者は後輪付近に水素タンクがあること、後者はバネ下重量が重すぎて 割に合わなかったのかもしれない。 最高出力90kWというと馬力換算で125馬力程度、一般的なガソリン車なら1600〜1800ccクラスで エクストレイルの車格や440kgの重量増を考えるとアンダーパワーにも思えるが、 電動機の特性の恩恵で最大トルクがターボ車の309N-m(31.5kg-m)には届かないまでも、 3000ccクラス並※になるため、重量増のハンデはさほど気にならないだろう。 ベース車のエクストレイルは2007年中にモデルチェンジが予定されているため、実車の展示がなかったのが残念。 ※試乗当時の日産車には排気量3000ccクラスの車がなく、1クラス下の2500ccか上の3500ccクラスになってしまうので 旧モデルになるが、HY33系セドリック/グロリアに搭載されていたV型6気筒3000cc級エンジン(VQ30DE系)は 標準的な仕様で最高出力162kW/最大トルク279,5N-m。直接噴射式やターボ付きも存在した。 コースは基本的に銀座からビッグサイト付近の往復だが、今回はその旨を伝えられていなかったのと、 ギャラリーの試乗車がコースを指定されていなかった点を混同してしまったため、 本社ギャラリーに30分程度で戻ってくることを拡大解釈してしまい、それならばと本社の目の前: 銀座から首都高に乗ってレインボーブリッジを渡り、臨海副都心から晴海通りで本社ギャラリーへ戻るルートで試してみた。 今回敢えて首都高を組み込んだ理由として、 ・試乗会のような平坦なルートではわからない要素がある ことはもちろんだが、 ・試走ルートにアップダウンを伴うことで補助ブレーキの有無の必要性を問う ・一般道路だけでなく高速道路走行時の扱いやすさを検証する ためだが、 僕の次の体験試乗における航続距離に影響するためあまり遠出はできない。 なお今回は使用しなかったが、助手席ではエアバッグ収納部になる運転席の前のグローブボックスに シガーソケットとETC車載器が備わっている。更にCD・MDプレイヤーもついており、 音楽やラジオを聴きながらの運転もよさげと思ったが、静寂性を体感する本来の意味に反するのでやめた。 しかしこれまでレンタカーも含めて3ナンバー車(エクストレイルは幅1.7m超)を運転したことがない。 まして今回は車両価格が桁外れに高い億単位ゆえ、下手な運転と交通違反は許されない。 一度体験試乗を申し込んだとはいえ、その高額ぶりに気が引けて運転を諦めた参加者もいたとか。 その意味では教習車に乗り直している感覚だが、そういえば教習所で乗っていた車がU12〜U14ブルーバード・・・ 以前ホンダFCX(初代:ZC1・ZC2系)に乗ったときに室内高さが低く天井に頭をぶつけ、トヨタと日産が乗用車タイプの燃料電池車を SUVベースにした理由がある意味で身をもって理解できたが、エクストレイルはもともとSUV故に頭上空間にゆとりがある。 しかし一時期流行したセンターメーターを採用しているため計器の視認性に違和感があり、 視線を左に移さなければならないのが難点。 ただインパネを見ていて気がついたのがデジタルメーターであること、タコメーターがノーマルの8000rpmよりも 更に高い16000rpmまで刻んであるので10000rpmまで振り回してみたくなるが、 重量増と空気抵抗が大きい関係で最高速度はメーカー公表値で150km/h程度。
タイヤはブリヂストンの低燃費タイヤ「エコピアEP03」を装着していたが、エコピアは主にバス・トラック向けの ラインアップで、乗用車向けは廃盤になったのか検索してもなかなか引っかからないと思ったら、 サイドウォールに"FOR ELECTRIC VEHICLES USE ONLY"(電気自動車専用)と記載されていたので、 もともと市販されていなかったのかもしれない。 またタイヤサイズが純正品やオプション設定にはなかった215/70R16 (タイヤ幅215mm、扁平率70%、16インチホイール装着の意味、Xに標準装備されているのは215/65R16)だった。 |
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日産本社ビルの回りを半周して、すぐ近くの銀座ランプから首都高都心環状線外回りへ入る。
ゲームでは首都高バトルや湾岸ミッドナイトMaximum Tuneでさんざん走り回っている首都高とはいえ、
実車では久々なので60km/h程度(電動機4000rpm前後)で流す。
料金所を抜けて窓を閉めると本当に静かで、注意深く聴けばモーター音も聞こえるだろうが、
自分の感覚ではタイヤのロードノイズが聞こえてくる程度。 浜崎橋ジャンクション〜芝浦ジャンクションを抜けて台場線をレインボーブリッジへと登っていくが、 左車線のままでは前が数珠繋ぎになり60km/hから加速できない。 そこでレインボーブリッジの手前で追い越し車線に出て80km/hまで加速。 定トルク領域が広いのか余裕で引っ張っていける。 |
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しかしレインボーブリッジから有明ジャンクション/台場インターチェンジへの下りでは少々不安を感じた。
高速道路で減速の必要がある場合、一般道路でも長い下り坂を降りる場合はブレーキペダルを踏む前に
マニュアル車ならシフトダウン、オートマチック車ならオーバードライブ(OD)スイッチオフ、
最近流行のCVT車ならDSレンジでエンジンブレーキ、大型車なら排気ブレーキを使って減速し、
ブレーキペダルでの減速を控えるのが鉄則だが、
電気自動車や燃料電池自動車ではアクセルオフで弱い発電ブレーキや電力回生ブレーキがかかる
セッティングの車が多いとはいえ、実質的にブレーキペダル操作だけで減速しなければならないため、
ブレーキ制御のセッティングによってはブレーキペダルに頼らざるを得ない。
台場インターで首都高を降り、小休止を兼ねてJHFC有明水素ステーション(初代)に立ち寄り記念撮影。 水素ステーションはお休みだったが、入口に停めておけば水素ステーションが何のためにあるのか 一般の方にもおわかりいただけよう。 しばらく停めておくと、僅かだが通りがかった人が興味深げに眺めていた。 アメリカでは弱冠17歳のハリウッド女優にFCXをリース販売したとのことだが、先を越され羨ましい。
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有明水素ステーションからは添乗していたスタッフに運転を代わり、ナビゲーション画面をFCV情報に切り替えて
加速・減速時におけるエネルギーの流れを追ってみた。後日試乗の機会が得られた際には注意してご覧いただきたい:
・加速時 |
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22km/h |
40km/hへ加速 |
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・減速時 パワーレベル:中間から下へ延びる エネルギーの流れ:電動機からバッテリーへ(写真では燃料電池からバッテリーへも補充電されている) |
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52km/h |
42km/hへ減速 |
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・停車中 パワーレベル:中間で停止 エネルギーの流れ:基本的に止まるが空調使用時やバッテリー消耗時は燃料電池からバッテリーへ |
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最後は国際展示場駅ロータリーからゆりかもめに沿って新豊洲を経由、晴海大橋〜勝どき橋を渡って帰着。
日産本社ギャラリー帰着後、5段階評価におけるアンケートに回答して試乗会は終了した。 |
今回自分で燃料電池車を運転した感想は「ほとんど従来車と変わらない感覚で使える」ということ。 短距離でのリアシート同乗ではなかなかわかりにくかった感覚が見えてきたような感じで、 現時点では先にも書いたように電気ブレーキを任意に使用できれば、日常での使用には申し分ないレベルに仕上がっている。 これで試乗時間が倍の1時間あり、コースの制約がなければ、首都高都心環状線を周回してから下町の路地裏を走るといった 実践的なコースを組んでみたかった。 車両単価がR34スカイラインGT-R(574万8000円:V-SpecII)やプレジデント(945万円:F50ソブリン)よりも高い億単位、 更に燃料電池自動車の運転体験者数が絶対的に少ないということもあり、 高級サルーンやスポーツ車とはまた違った緊張感やわくわく感、 そしていち早く体感できたという充実感が得られたことも付記しておきたい。 |
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