新春の箱根にFCXを追って (2006.1.2)

関東では新春恒例の東京箱根間往復大学駅伝競走「箱根駅伝」。
学生時代は陸上部ではなかったし、ごひいきの大学が参戦しているわけでもなかったので、
これまでは「雑魚寝駅伝」で寝正月(爆)でしたが、
平成16年の第80回競走から本田技研工業が車両を貸与、
あわせてオフィシャルカーに燃料電池車FCXを投入してきたことで「雑魚寝駅伝」にできなくなりました。

最近のマラソンや駅伝では選手を排気ガスから保護する目的で低公害車を採用するケースが増えており、
平成15年の第79回大会まで三菱自動車が車両を貸与していたときは直接噴射式ガソリンエンジン
(GDIエンジン)を搭載したギャランやパジェロなどが採用されていました。
燃料電池車ではトヨタFCHVやダイハツムーヴFCV−K−2が他の大会でオフィシャルカーとして
登場したこともあるので、駅伝やマラソンの中継では選手や白バイだけでなく
伴走車や中継車に目を向けてみると新たな発見があるかもしれません。
特殊車両のファンも増えてきたことですし。


大会本部車:FCX

本部車には燃料電池車FCXが登場しました。
燃料電池車は寒さに弱いという難点がありますが、箱根駅伝の復路:芦ノ湖出発時の気温は 氷点下になることもあり、寒冷地での使い勝手を試す機会にもなっています。
FCXはこれまでのバラードの燃料電池に代わって自社開発の新しい燃料電池スタックを搭載することで 氷点下20度でも稼働できるようになっています。

ホンダFCX
http://www.honda.co.jp/FCX/
第80回箱根駅伝
http://www.honda.co.jp/FCX/2004ekiden/index.html
第81回箱根駅伝(製品ニュース)
http://www.honda.co.jp/news/2005/4050106-fcx.html


広報車・技術総務車:シビックハイブリッド

昨秋の東京モーターショーでお披露目された新型シビックハイブリッドが早くも登場しました。
写真は広報車で、屋根にスピーカーを載せて”露払い”を務め、選手の接近を伝えています。
標準タイプでは1800ccクラスにランクアップされてしまいましたが、 ハイブリッドでは1300ccエンジンを採用し、これをモーターで補佐することで出力を補うだけでなく、 シリンダーの吸気を止めエンジンを空回しにしてモーターの力で走ることもできるようになっています。

ホンダシビックのハイブリッド技術
http://www.honda.co.jp/tech/auto/engine/honda-ima/


カメラ車:ダイナハイブリッド

ホンダは軽自動車と海外向けのピックアップ(乗用車ベースのトラック)を除いてトラックを造っていません。
しかし近年は配送や宅配便の2トン車や4トン車を中心に低公害トラックが増えており、 日野デュトロ&トヨタダイナではディーゼル電気ハイブリッド車(HIMRの改良版)も登場しています。
東京〜箱根間は100km程度なので距離的にはCNG車やLPG車でも十分ですが、 これらの場合6区の芦ノ湖〜小田原間に待ち構える長い下り坂を考えるとトラックやバスに必須の補助ブレーキ: 排気ブレーキが弱いため、モーターが補助ブレーキとして機能する電気式ハイブリッド車の方が好都合なのかも知れません。

トヨタダイナハイブリッド
http://toyota.jp/Showroom/All_toyota_lineup/dyna/menu/diesel_hybrid.html
日野デュトロハイブリッド
http://www.hino.co.jp/dutro/hybrid.html
参考事例:松本電鉄・上高地シャトルバスセンター
http://www.alpico.co.jp/shuttle_center/policy/hybrid.html


運営管理車・緊急対応車・医療班:ステップワゴン

毎年採用車種が変わるのがこのカテゴリーの車。
各チームの監督や記録係、代走の選手などが乗るためSUVやワンボックスタイプが多いですが、 前回の第81回大会(平成17年)はエリシオン、次の第83回大会(平成19年)ではエディックスが採用されていました。
助手席側にはASIMOのステッカーが貼られています。


その箱根駅伝を走ったホンダFCXに同乗する機会を、約3週間後の国際水素・燃料電池展(FC EXPO)で 得ることになった。
今回JHFCはFC EXPOの試乗車として乗用車4台とバス1台を用意していた。持ち込んだのは
・トヨタFCHV
・日産エクストレイルFCV
・ホンダFCX
・メルセデスベンツF−Cell(Aクラスベース)
この4台を2台ずつローテーションで走らせるが、車種の事前指定はできないためどの車に当たるかは運次第だ。

この他FCHV、三菱グランディスFCV、スズキMRワゴンFCV、 GMハイドロジェン(オペルザフィーラベース)、F−Cellカットボディがブースに展示されていた。

僕は事前にインターネットで試乗を申し込んだが、空きがあれば当日予約も受け付けていて、朝10時の開場と同時に 試乗受付には希望者の列ができていた。 乗用車の枠は1台につき助手席+後部2人の3人まで乗ることができ、これが2台編成で1時間に3回走るので 1時間あたり18人、1日あたり108人の枠があるが、10時半の時点で早々に”完売御礼”。 注目度の高さがうなずける。

西ホールの屋外展示場(6000平方メートル)に出ると抜けるような青空が広がり、遠く富士山も望める。 この屋上展示場が約4週間前(12月28日〜30日)はコミケの企業ブース入場待ち/コスプレ広場として ごった返していたことを考えると、ある意味拍子抜けだ。
10時台はFCXとF−Cellが出ているが、昨秋の東京モーターショーではF−Cellの試乗予約が埋まるのが 早かったことを考えれば、FCXに乗れる可能性は自ずと高まった。

・待ち受けていた「思わぬ洗礼」

そして遂にFCXに乗ることができたが、待ち受けていたのは天井に頭をぶつけるアクシデントだった(爆笑)。
乗用車タイプの燃料電池自動車は床下に燃料電池スタックと水素タンクを埋め込んでいて上げ底になっているため、 後席のヘッドクリアランス(頭から天井の間の空間)が犠牲になっている。 そのため運転席と助手席は通常の乗用車と変わらない姿勢を取れるが、後席では子供か背の低い人でなければ苦しい。
これで多くの自動車メーカーがFCVのベース車にミニバンやSUVタイプを採用する理由がわかったような気がする。 また天井には室内灯の他に水素ガスのセンサーも備わっているため、このセンサーを壊さないように気をつけたい。


運転席に目をやると、インパネは左がパワーレベル、中央が速度計、右が水素残圧計とシフトポジションとなっている。 パワーレベルメーターは2列になっていて、外側の青い弧が主回路(モーター)の電流計、 内側の黄色い弧は後席背面のキャパシターの電流計だ。 なお主回路の電流計は黄色がキャパシターに関係する電流、青が燃料電池からの出力となっているので、 試乗の際はこの表示に注目しておきたい。

説明員によるレクチャーを受け、F−Cellを従えて体験試乗に出発する。
停車時は燃料電池がアイドル状態で表示は1目盛り程度だったが、アクセルを踏んで加速するとまずキャパシターから 制御装置を介してモーターに電流が流れ、次いで燃料電池の出力が上がってキャパシターの比率が下がる。 まだ構内徐行の状態なので出力はそんなに出ていない。
出発すると西ホール裏の搬入用スロープを下りるが、トランスミッションがないのでエンジンブレーキが使えない。 ブレーキペダルを踏めば回生ブレーキが作用してキャパシターへの充電も行われるとはいえ、 ブレーキの発熱やパッドの消耗を考えると大型車のようにリターダー機能が欲しい。

スロープを下りて臨港道路へ出ると国際展示場駅へ行き、駅前のロータリーを一周する。 ここから鉄鋼埠頭まで臨港道路を1往復する行程だ。 鉄鋼埠頭への道は鋼材メーカーの物流拠点とゆりかもめの車両基地しかなく、鋼材を積んだトレーラーが出入りする程度で 交通量は少ないため、このルートになったのだろう。
ビッグサイトの東西連絡通路を抜けてアクセルペダルを踏み込むと、 まずキャパシターの放電量がマックスの80kWまで上がり、追随するように燃料電池の発電量が上がる。 空車状態で1670kgもあり、そこに3人も乗っているのでゼロヨンはきついかも知れないが豪快な加速だ。 FCXのカタログスペックは最高出力80キロワット(約109馬力)、最大トルク272N・m(約27kg−m)と なっているが、最高出力はコンパクトカー並に少なく見えるものの、最大トルクは2500cc〜3000ccクラスに 匹敵する。 ブレーキを踏むと今度は燃料電池の出力が落ちて回生ブレーキが作動、半分まで容量が落ちたキャパシターが充電されて 容量が回復する。
終端で折り返してゆりかもめの車庫の脇を通り、再び搬入口からビッグサイトに入ってスロープを上るとまた出力が上がる。 屋外展示場に到着して質疑応答の後、終了となった。

これまでの試乗は平坦路が主体だったが、今回は坂道や全開加速を体感できたことで意義のあるものとなった。
また他社のFCVでも燃料電池+二次電池からモーターへの電流の流れがグラフィックで出ていたが 今回のFCXでは燃料電池とキャパシターの出力比率が手に取れるようだったことも付記しておきたい。




FCHV−BUS
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